第73章

まだ先ほどと同じタクシーで、山田澪が福江おばあさんの荷物を持って後部トランクに入れていた。

福江おばあさんの持ち物は多くなかった。カビの生えた布団や古びた服は、もう使えないものばかりだった。

しかし福江おばあさんは捨てられなかった。放浪の数年間で、あまりにも貧しさを知りすぎていた。

また追い出されたときに、身を覆うものさえなくなるのが怖かったのだ。

山田澪は福江おばあさんの気持ちがわかったので、荷物を全部まとめて別荘に持ち帰り、物置部屋に置いてあげた。

おそらく病気が回復したばかりの影響だろうか、山田澪が荷物を置き終えると、突然目の前がぐるぐると回り始め、体が制御できなくなり、まっ...

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